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災害時の「正常性バイアス」は逃げ遅れの原因に!

災害時の「正常性バイアス」は逃げ遅れの原因に!

はじめに

「雨が降りそうだけど、多分大丈夫だよね」なんてことは、日常茶飯事ですよね。
しかし、それは「正常性バイアス」という心理現象が働いていることをご存じでしょうか?
正常性バイアスは、平時には何の問題もないことがほとんどですが、災害時には逃げ遅れや被害が拡大する原因になり得ます。
今回は、正常性バイアスについて詳しく解説していきます。

正常性バイアスとは

正常性バイアスとは、人の心を守るために作用する心のメカニズムといえるもので、決して悪いものではありません。
しかし、災害時には、正常性バイアスが働くことで逃げ遅れたり、被害が拡大したりする原因になり得ます。
ここでは、正常性バイアスとは何かについて解説していきます。

正常性バイアスは心を守るためのメカニズム

正常性バイアスは、精神的なストレスから心を守るためのメカニズムです。

異常が起こった際に、事態をそのまま受け止めるというのは、非常にストレスがかかります。それが続くと人の心はどんどん疲弊してしまい、最終的には日常生活に支障をきたすおそれもあります。
ある程度、ストレスを避けるために、正常性バイアスは必要なメカニズムなのです。

正常性バイアスは避難を遅らせる?

日常生活の中での正常性バイアスは、ストレス軽減のためにも必要な働きではありますが、災害時には避難を遅らせる原因になってしまいます。

被災後に「まさかこんなところまで津波がくるなんて」「まさか自分の家が崩れるなんて」というコメントを目にしたことはありませんか?
これがまさに、正常性バイアスが働いた代表例といえます。

どんな災害が来ても、今までは大丈夫だったから、今まで平穏な生活をしてきたのだから自分は大丈夫だろうと、ストレスから心を守るために自分にとって好ましい結果が得られると考えてしまうのです。
そうすると、自分は大丈夫だから避難しなくてもいいだろうと自宅から避難所へ移動しない、結果的に逃げ遅れるという悪循環に陥ります。
正常性バイアスが強く働く人の場合、他人が避難を促しても拒絶したり、明らかに危険が迫っているのに避難しないといったことになりかねません。

正常性バイアスが災害時に与える影響と被害例

正常性バイアスが災害時に与える影響とその被害例を紹介します。
災害発生時の教訓としてもぜひ参考にしてみてください。

韓国の大邱地下鉄放火事件

2003年2月18日、大邱(テグ)地下鉄で起こった放火事件は、死者197名、負傷者147名と、世界の地下鉄火災史上2番目の被害を出しました。
この時、電車内に煙が充満しているのに、避難せず車内で座っている人が多数いたことが話題になりました。

避難を促す車内放送がなかったことや、周りの人が避難しなかったことで正常性バイアスが働き、「避難するほどではないだろう」と電車内にとどまった人が多く、被害が拡大したと考えられています。

東日本大震災

2011年3月11日の東日本大震災では、想定以上の津波によって多くの逃げ遅れが発生し、犠牲となりました。
この時も「海からそれなりに離れているし、津波はここまで来ないだろう」という正常性バイアスによって、逃げ遅れが多数発生したと考えられています。

御嶽山噴火

2014年9月27日、噴火警戒レベル1であった御嶽山が突然噴火し、死者58名、行方不明者5名という日本における戦後最悪の火山災害です。
登山客が撮影した噴火直後の映像が多い災害でもありますが、その行動自体が正常性バイアスによって、避難を優先すべきであるという意識が薄れているといえるでしょう。

正常性バイアスに引っ張られなかった実例

正常性バイアスに引っ張られなかった例として、東日本大震災の釜石市の出来事がよく取り上げられます。多くの住民が協力しながら避難し、浸水区域にあった小中学校の生徒全員が助かったため、「釜石の軌跡」ともいわれています。
一時避難所に移動した後、高齢者の「ここは危ない」という言葉ですぐに高台への移動を始められたのも、正常性バイアスに引っ張られなかったためでしょう。

この迅速な避難の裏にあるのは、釜石市が防災教育に力を入れ、児童の下校時避難訓練の実施や避難場所の確認です。
正常性バイアスに引っ張られないためには、日頃からの訓練や自己反省の機会を持つことが重要になってきます。

まとめ

今回は、正常性バイアスが災害時にどういう影響を与えるのかを解説しました。
正常性バイアスは日常的に働いているため、強く意識することも少ないでしょう。
しかし、災害時には強い不安感やストレスを感じ、正常性バイアスが強くはたらく可能性があります。
緊急事態であるからこそ、情報を集め、自分の判断が正しいのかを考える冷静さを保てるよう意識しましょう。

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