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消火器の法律改正
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旧規格の消火器は使用禁止です
総務省発令の消防法令により2022年1月1日以降、消防法施行令第1に掲げる防火対象物において旧規格の消火器の設置・使用が例外なく禁止されました。
これにより、2010年12月31日以前に製造された消火器は全て旧規格に該当するため、新規格の消火器に交換をしなくてはなりません。
新規格・旧規格の消火器の違い
新規格と旧規格の消火器の違いは消火器本体に表示してある「適応表示マーク」で判断できます。
・新規格(2011年1月1日以降)→適応火災マークが「イラスト」
・旧規格(2010年12月31日以前)→適応火災マークが「文字」
下図通り、その消火器の持つ適性の表示方法が変わっています。
旧規格の使用は消火器未設置と判定されます
内部点検と型式失効の違い
原則として消火器は、加圧式消火器に於いては製造年から3年を過ぎ、4年目よりその建物内にある全消火器のうち10%を、年2回の機器点検時毎にロットを組んで内部試験を実施、蓄圧式消火器に於いては製造年から5年を過ぎ、6年目より全消火器のうち10%を年2回の機器点検時にロットを組んで内部試験を実施する義務があります。
この内部点検と型式失効は混同されることが多く、「内部点検を実施すれば消火器は交換しなくてよい」と解釈する見解も見受けられます。しかし、あくまで内部点検は既存の消防法で以前から義務付けられているもので、今回の型式失効は消火器の容器の適応表示マークの基準の変更に伴う法律の変更による消火器の刷新です。指摘されている箇所も違う上に、別物の法律です。
従って内部点検の実施は型式失効の免罪符にはなりません。
ガス消火器・泡消火器・強化液消火器・車載式消火器も型式失効の対象です
二酸化炭素・ハロン消火器、化学泡消火器、強化液消火器、車載式消火器も全て型式失効の対象となります。前項で申し上げた通り失効の前提が内部ではなく、外部容器の適応表示マークに対する刷新です。適応表示マークは消防法により、全ての種類の消火器に同じ規格での表示を義務付けていますので、市場の9割を占める粉末消火器同様、全ての消火器が取替の対象となります。
住宅用消火器も型式失効が適応されます
家庭に設置する住宅用消火器も同様に型式失効が発生します。しかし、住宅は消防法施行令第1に掲げる防火対象物ではない為、消防法による強制力はありません。従って各住宅の家主が管理し、適切な対応をする必要があります。
住宅用消火器の推奨使用可能期限は6年程度ですので、これを目安に定期的に取替をするのがベストです。住宅は消防署への設備の届出の義務もなく(地域によっては消火器や住宅用火災報知機の取付申請を出すよう戸別に求められたという話も聞きましたが、これは本当に稀なケースだと思います)、消防職員が戸別に査察することも滅多にありませんので、各自が正しい知識を身に着け、対応が必要です。
消火器の経年劣化による事故を防ぐために型式失効を一斉制定
今回全種類の消火器が型式失効の対象になった原因として、経年劣化により古くなった消火器が原因で発生した沢山の人身事故が挙げられます。これらは全て古くなった消火器が関連しており、誤って衝撃を与えたり使用することにより暴発し、人身被害をもたらしました。このような事例を受け、二度とこのような事が起こらないよう法律から抜本的に変更し、古くなった消火器を処分させる事が一斉型式失効の思惑です。
また、人身事故だけではなく、古くなった消火器は緊急時に規定量の消火薬剤が出なかったり、そもそもレバーが固まって起動できない等の不具合が多数報告されております。
全ての防火対象物が消防設備士と契約して定期点検を実施していればこういう事態にはなりにくいのですが、残念ながら2022年現在において5割程度しか消防点検を実施していません。消防点検実施率を10割にするには相当な時間を要し、また個々の防火対象物の事情も複雑で容易ではないためこれらをまとめる事は即効性に欠けます。
なので、まずは古い防火対象物から古い消火器を強制的に排除するために今回の型式失効は実施されました。その観点で考えていくと、防火対象物・住宅に関わらず、型式失効となった消火器は随時取り替えていく必要があります。平時であれば全く意味を成さない消火器ですが、火災発生時には最も手軽に扱う事ができ、規格通りに機能すれば消火の確実性が高いものになりますので、常に有事に備えて万全の状態にしておく事が望ましいです。
火災発生時に於いて「備えあれば憂いなし」とはまさに消火器のためにある言葉と言っても過言ではないのではないかと思います。
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