消防・防災情報
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消防設備点検の必要性
この記事の目次
なぜ消防設備点検の実施が必要なのか?
消防設備とは、消火器、自動火災報知設備、消火栓・スプリンクラー・ガス消火設備などの消火設備、避難器具等の事ですが、これらは家電や家具と同様、月日が経つと劣化し、緊急時に使用できなくなっていることがあります。
そういった火災による緊急時の消防設備のアクシデントを防ぎ、消防設備を安全かつ確実に起動させ、人命や安全、財産を守るために消防設備の定期点検を法定通り行う必要があります。
また、法定点検の結果内容を、特定防火対象物に該当する物件は1年に1回・非特定防火対象物に該当する物件は3年に1回所轄の消防署に届け出る必要もあります。
今まで起こった消防設備の不具合による事故
消防設備が正常に起動しなかった事により発生した事故は沢山ありますが、一例を紹介します。
・火災発生時に消火しようと消火器を探したが見つからず、消火が遅れ建物が半焼(後の現場検証で消火器を指定の位置に設置しておらず、責任者が作業の邪魔になるということで別棟の倉庫に全て消火器を隔離し、従業員にその旨を知らせていなかった事が判明)。
※某部品加工工場
※消防点検:3年に1回の消防提出時のみ実施
・焼煙に気付いた宿泊客が火災を館内に周知しようと廊下に設置している発信機の押ボタンを押したが警報が鳴らず、宿泊客の避難が遅れ、数人負傷者が出た(火災発生の5年程前、火災報知機の感知器の故障により警報音が鳴りやまなくなり、経営者が近所の電気業者に依頼し、受信機内のベルの線を外し、以降そのまま放置していた)。
※某ビジネスホテル
※消防点検:運営時から未実施
・火災発生により従業員、訪問者を全て退避させた後、屋内消火栓を起動させ放水コックを開いたが水がほとんど出ず、結果延焼が拡大し、消防車到着後ようやく火は消し止められたが、建物はほぼ全焼、機材等ほぼすべて失った(消火栓のポンプは起動したが、消火用貯水槽が水漏れをしていた為消火用水が渇水。また、減水時に自動で給水するボールタップが固まっており、給水もされていなかった。貯水槽用の減水警報は元々設置されていなかった)。
※某製菓工場
※消防点検:火災発生時の5年前から経費削減により未実施
いずれも専門業者による消防点検を実施していれば防ぐ事が出来た二次災害です。
消火器の設置場所や火災報知機の音響チェック、消火栓の水源試験は全て消防点検基準に入っている項目で、これらの検査で判明する不備事項です。不備事項を指摘されることにより不備箇所の改修、もしくはすぐに改修出来なくとも、設備に対する注意喚起はでき、それも織り込んだ避難や消火活動が出来たはずです。
法規に従って回数通り消防点検を行うことが大切
消防法施行令別表第一に区分される防火対象物の消防点検は、6か月以内に1度消防点検を行う事が義務付けられています。
使用していないので、故障することなんかないんじゃないか?という声もよく聞くのですが、それは大きな間違いで、例えば消火器や屋内消火栓に使用されるパッキン・ホースの自然劣化、火災報知機の火災を感知する感知器内に侵入するゴミ・埃、避難器具に発生する支持部の錆浸食など、使用していなくても日々劣化に向かっています。1日単位で考えると劣化は微小ですが、これを数年単位で放置すると、緊急時に致命的な動作不良へと繋がり、人命や財産を失う結果になりかねません。
消防法第17条の3の3により、年に2回の消防点検を実施し、特定防火対象物は年に1回、非特定防火対象物は3年に1回消防署に点検結果を報告することが義務付けられています。これを誇大解釈して、「じゃあうちは年に1回だけ点検する」「じゃあうちは3年に1回だけ点検する」という声もまれに聞きますが、これも間違いです。
まず、単純にこの解釈は消防法違反である事。
もう一つの理由としては、消防設備は日々部品や配線が劣化しています。少しの劣化では使用に差し支えありませんが、これが重なると動作不良や最悪暴発に繋がり、却って危険なものになってしまいます。その兆候をいち早く見つけて報告し、改善を最小限に抑え、緊急時の防災防火対策に備えるのが消防点検の目的です。
現役の消防設備士から見た法定点検の大切さ
いざという時の人命が関わってくる消防設備ですが、法に定められているということもあり、ほとんどの施設ではしっかりと法令を遵守した点検業務を行なっていると思います。
しかし、中にはこれを守らず、大事に至ってしまうケースも少なからずあります。
最近では過去の大きな事故を教訓に、消防法も年々厳しくなっており、今ではほとんどありませんが、過去には法令を守らず3年に一度しか点検業務を行なっていない、といった施設も見かけることがありました。
こういったケースでは、点検で出向する度に消火器が数本単位で行方不明、もしくは勝手に移動されている・火災報知器の誤作動がうるさくて勝手に電源を落としており、電源を立ち上げたら複数のエラーが出る・消火栓を起動するとポンプ周りから水漏れする等の致命的な欠陥がいくつも見つかることがあります。
法定通り6か月に1回点検を行うことができれば、不備があった際にすぐ指摘し、余裕を持って改修案を出せますが、この状態では改修見積もり以前に原因調査から行う必要があり、結果としてオーナー様に多額の改修費を負担させてしまいます。
また、こういった状態だと、ヘタに設備を起動したらどうなるか解らないため、まともな点検が出来ず、設備に不備が起こった際の原因追及に時間が掛かりすぎてしまいます。
確かに、規模にもよりますが定期的な点検を行うことで、多くの予算が必要となるかもしれません。しかし、法令を遵守しないことでより多くの費用負担が発生してしまうケースは少なくありません。
結局は、法定通りに点検を実施した方が改修にかかる費用が少なく、かつ消防法も順守しているので有事に消防設備の点で追及されるリスクも少なくなるでしょう。
まとめ
このように、商的、技術的、法律的側面のいずれから見ても、半年に1度消防設備の点検を実施した方が良いと言えます。
火災による事故を起こさないように、日々防火対策について話し合い実施していくことは前提として不可欠ですが、それでももし事故を起こした場合の命綱として消防設備の設置・整備が義務付けられています。万が一の際、命綱が機能しないということがないよう法を順守し、設備の機能の維持を図って行くことがとても大切だという事を周知して頂ければ幸いです。
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