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消火器の能力単位、および消火面積

消火器の能力単位、および消火面積

能力単位とは?

消火器にはA火災・B火災・C火災の3種類の火災に分類されています。
これらを消火する能力値が各消火器ごとに決められており、これを数字化したものを能力単位と言います。
しかし、A火災とB火災では消火に必要な能力単位が違い、消火器ごとに数字も違ってきます。

例えば上の画像の場合、能力単位がA-1、B-2 となっております。
これは、普通火災(以降A火災)では「能力単位1」分の能力を発揮し、油火災(以降B火災)では「能力単位2」分のパフォーマンスを発揮するという意味です。
ちなみ電気火災以降(C火災)には能力単位は存在せず、C火災に対応できるものは能力単位の欄に「C」とだけ表示されます。
この能力単位の基準ですが、「1」で8リットルの水バケツ3杯分と同等の消火能力になると見做されています。

消火器ごとの各火災への適正

各消火器の薬剤ごとに、A・B・C火災に適応するものとしないものがあります。各消火器ごとに特性と適応火災を見ていきます。

粉末消火器

粉末消火薬剤を放出します。現在消火器の主流であり、一般にABC消火器といわれます。
この粉末消火薬剤は全ての種類の火災に効果を発揮しますが、電気製品や精密機械に薬剤が掛かると長時間のうちに空気中の水分を含み、金属を錆びさせたり、絶縁劣化する場合があるので、専門家に清掃を委託する必要があります。また、冷却作用が無く再燃の危険が非常に大きいので、鎮火後は完全に消火したかどうか、注意を要します。

適応火災
・A火災
・B火災
・C火災

強化液消火器

アルカリ金属塩液により、消火性能を高めた薬剤を放出します。
冷却と抑制により、消火を促し、特に天ぷら油火災に対しては、主成分の炭酸カリウムと油脂が反応(鹸化)し高温の油を瞬時に不燃化するため、最も有効な消火器と言えます。
このため欧米では厨房用の消火器とされる場合が多いです。
鉱物油火災にも適応しますが、薬剤容量の十分なものを設置するなど、能力に注意する必要があります。

木材や紙等の普通火災に対しては冷却作用と脱水炭化作用により消火し、強力な抑制作用をもち、消火速度も非常に速いです。
薬剤は強アルカリ性であり、人体に対する刺激が比較的強いので、目などに入った際は水道水で充分洗い流さなければなりません。また、皮膚に長時間触れさせるのも危険です。

電気火災にも使用できますが、一旦薬剤を浴びた電気機器は絶縁が悪くなったり錆びたりするので避けた方が良いでしょう。
また、ABC粉末消火器と同時に使用(薬剤が混合)すると、直ちに人体に影響を及ぼす濃度ではないが、アンモニアガスが発生するので、消火後は直ちに換気する必要があります。

適応火災
・A火災
・B火災(噴霧ノズルを持つもの)
・C火災(噴霧ノズルを持つもの)

■強化液中性消火器(ハイパフォーマンス)
A:普通火災では冷却作用と浸透作用により確実に消火
B:油火災では泡状になった消火剤が油面を迅速にシールして再燃を防止
従来のアルカリ性強化液消火器では消火の困難だった、ふとん、綿くず、段ボールなどの深部火災や、ガソリン等の引火性油火災も確実に消火します。

泡消火器

泡消火剤の反応による機械泡、または化学泡を放出します。冬季で5℃以下の場所には設置できません。
機械泡消火器は、発泡しやすい泡消火薬剤の水溶液を薬剤とし、水成膜泡消火薬剤と、リン酸塩や浸潤剤を配合した界面活性剤泡消火薬剤の2種ありまずが、いずれも主成分は界面活性剤です。空気を導入させる特殊な構造のノズルを用い、放射時に放射ノズルから空気を取り入れ、発泡して噴射します。

構造は蓄圧式で、ノズル以外は強化液消火器と同じ構造で、車載式には加圧式も見られます。
化学泡消火器はA剤(炭酸水素ナトリウム)と防腐剤、B剤(硫酸アルミニウム)を溶かした水溶液を薬剤として使用しています。A剤とB剤は消火器内で別々の筒に入れられており、使用時に消火器をひっくり返して混合・反応させると二酸化炭素が発生し、薬剤が放射します。この時副生されるコロイド状の水酸化アルミニウムは泡になるが、安定性が低いので、A剤にはタンパク泡消火剤やムクロジ等からのサポニンが混合されています。

機械泡、化学泡共感電の危険があるので、高電圧の電気設備には使用してはいけません。また、電気製品や精密機械に薬剤が掛かった場合は腐食や絶縁劣化の危険があるので専門家に委託して清掃するようにします。

適応火災
・A火災
・B火災

二酸化炭素消火器

二酸化炭素を放出します。人体に有毒であるため、住宅、地下街では設置することができません。

気体なので汚損が無く、特に電気設備、電算機、電話交換機、可燃性インクを使う印刷工場や溶剤類を扱う実験室、レース場、空港等によく用いられます。
構造は高圧で圧縮した液化二酸化炭素を薬剤として使用、自身の圧力で放射します。独特のラッパ状のホーンを持ち、放射時はドライアイスと霧が発生します。放射時にはホースや容器(消火器本体)は極めて低温となるのでレバーやホーンの握り部分以外には触れてはいけません。

消火の作用は窒息によるものです。再燃の危険が大きいので、鎮火後は完全に消火したかどうか、注意を要します。
風上から放射し、使用後は直ちに換気を図ってください。放射時はドライアイス(粉末状)混じりのガスを噴射し、その温度は低いですが、熱量の小さいことも相俟って燃焼物を冷却するまでに至らず粉末消火器同様、再燃の危険は大きいです。

適応火災
・B火災
・C火災

ハロゲン消火器

消火剤としてハロゲン化物を使用しますが、ハロゲン化物の使用抑制により、現在は製造されていません。
薬剤はハロン2402、ハロン1211、ハロン1301が用いられています。
これらは1994年1月1日からハロン規制が行われたため現在は製造されていません。
継続設置されている場合、型式失効を迎えた消火器は経過措置として2021年末までは設置が可能でした。

前項の二酸化炭素同様に汚損が無い上に二酸化炭素より消火能力が優れているため、特に電気設備、電算機、博物館、電話交換機、競技車両、軍用車両、警察車両、溶剤類を扱う実験室によく用いられていました。
消火の作用は窒息と抑制作用によるものです。
冷却作用が少なく再燃の危険が非常に大きいので、鎮火後は完全に消火したかどうか、注意を要します。風上から放射し、使用後は直ちに換気を図ります。

適応火災
・A火災(特例として比較的大きいもののみ)
・B火災
・C火災

消火器と消火面積

防火対象物内はA火災に分類され、用途や構造、面積によって必要な消火能力が決まります。
耐火構造か否か、用途の種類はどれに分類されるかによって決まり、各階ごとに床面積で割り算をし、そこに必要な能力単位を算出します。

また、特例として、大型消火器(A火災10以上、B火災20以上のもの)を設置した場合は、その消火器の範囲内の必要能力単位1/2に減免出来る、水•泡•ガス消火設備を設置した場合はその範囲内の必要消火能力単位を1/3に減免出来るという特例解釈もあります。
しかし、結局のところ、消火器の必要設置距離は、「小型消火器で歩行距離20m以内、大型消火器でも歩行距離30m以内ごとに設置すること」となっていますので、防火対象物の消火器の設置本数の算定は、能力単位よりも歩行距離で測って本数を決める事が多いのが現状です。

まとめ

昨今消火器はほぼABC粉末消火器 10型という大きさ、種類のもので統一され、殆どの建物、状況に採用されて設置されています。
理由は全ての火災に適応する上に、メーカーもこのタイプの消火器の需要が多いので大量に生産しているので単価も割安で、どのメーカーも「A火災3 B火災7 C火災」と能力単位も決まっているので計算しやすいからです。

しかし、粉末消火器が起因する現場の汚損や鎮火後の再燃焼の懸念から、状況によっては粉末消火器と一緒に強化液消火器を一緒に設置するよう指導される場合もあります。
能力単位や消火器の適正を消防法の基準に合わせて設置する事はもちろん大切ですが、消火器の特性を理解し、環境によって消火器の種類を専門業者や消防署に相談しながら選んでいくという事もとても大切な事だと思います。

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