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二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの変更点一覧

二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの変更点一覧

はじめに

二酸化炭素消火設備による死亡事故が相次いだことにより、2023年(令和5年)4月1日から、改正された二酸化炭素消火設備に関する技術上の基準が施行されました。
それに伴い、2023年(令和5年)3月31日に新たなガイドラインも公示されました。
今回は、新旧ガイドラインの変更点等についてまとめていきます。

さらなる安全対策が必要に

今後、閉止弁がないものは、2024年3月31日までに、消防庁長官が定めた基準に適合するものを設置する必要があります。
すでに設置(2023年3月31日までに)されているものに関しては、
①直接操作により操作する部分に、操作方向又は開閉位置を表示
②見やすい箇所に常時開放し点検時に閉止する旨の表示
③直接操作又は遠隔操作により操作した場合、確実に開閉するもの
④製造者名又は商標、製造年、耐圧試験圧力値、型式記号、流体の流れる方向を表示
以上を満たすものは、基準に適合する閉止弁とみなされます。

消防庁の調査によると、2021年(令和3年)7月16日現在の閉止弁の設置状況は以下のようになっています。

閉止弁未設置件数 19%(サンプル数1,490件)
1991年以降の未設置件数 5%(サンプル数1,076件)
1991年以前の未設置件数 56%(サンプル数414件)

1991年以前に設置された二酸化炭素消火設備には閉止弁が付いていないものが半数以上という結果でした。
2024年(令和6年)3月31日までの既存設備への閉止弁設置工事では、緩和措置が適用されます。

(参考:総務省消防庁 特殊消火設備の設置基準等に係る検討部会

新旧変更点一覧

ガイドラインの内容で、大きな変更としては以下の5つです。

・出入口が一つの場合は、「避難口が容易に確認でき、歩行距離が「20m以下」の場合に限る」ことと、距離が10m短くなった
・防護区画の漏洩防止のため、区隔壁の仕上げ等の施工について言及された
・自動起動方式となっている場合の安全対策について言及された
・標識についての規定の変更
・逃がし弁、遅延装置、閉止弁の設置等について規定された

変更点を比較一覧にしています。
旧ガイドラインになかった規定については【新規追加】、その他記載がないものは変更なしとして省略しています。

変更点
根拠法令 危険物の規制に関する規則第32条の7第1号 消防法施行令第16条第1号
防護区画について 1 防護区画には、有効に二方向避難ができるように2以上の出入口が設けられていること。ただし、防護区画の各部分から避難口の位置が容易に確認でき、かつ、出入り口までの歩行距離が20m以下の場合にあってはこの限りではない。 1 防護区画には、2方向避難ができるように2以上の出入口が設けられていること。ただし、防護区画の各部分から避難口の位置が容易に確認でき、かつ、出入り口までの歩行距離が30m以下である場合にあっては、この限りでない。
2,3【変更なし】
防護区画の漏洩防止対策について
【新規追加】
防護区画を構成する区画壁は、消火剤が漏洩するおそれがない構造とすること。
特に、ALCパネル、押出成形セメント板等の工場生産された規格部材等による施工方法を用いたものにあっては、モルタル塗り等による仕上げ、目地部分へのシーリング材等の充てんその他の必要な漏洩防止対策を講じること。
起動装置について 4 自動起動方式となっている場合は、その旨の注意文章を自動火災報知設備の受信機及び二酸化炭素消火設備の制御盤に表示すること。
5 多数の従業員等が出入りするおそれのある施設の自動起動方式の二酸化炭素消火設備に設ける手動式の起動装置は、誤操作による消火剤の放出防止のため、二酸化炭素消火設備起動用の感知器の作動と手動式の起動装置の作動で放出するものとすることが望ましいこと。
6 上記に掲げるほか、次によること。
(1) 消火剤の放射の停止信号を制御盤へ発信する緊急停止装置を設けること。
(2) 消火設備の自動式の起動装置は、2以上の火災信号により起動するものとすること
放出表示灯等の保安措置について その他変更なし 3 放出表示灯を設ける出入口の見やすい箇所に、保安上の注意事項を表示した注意銘板を次図の例により設置すること。
→「標識等について」として独立
標識等について 1 貯蔵容器を設ける場所及び防護区画の出入口には、次の例による標識を設けることが望ましいこと。
2 防護区画内の見やすい位置に、保安上の注意事項を表示した注意銘板を次図の例により設けることが望ましいこと。また、あわせて1(1)図1を設けることが望ましい。(以下略) 旧ガイドライン「音響装置について」の2と同一
音響警報装置について 2 他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができるように措置すること。
4 自動式の起動装置を設けた二酸化炭素消火設備の音響警報装置は、音声による警報装置とすることが望ましいこと。
「標識等について」に集約 2 防護区画内の見やすい位置に、保安上の注意事項を表示した注意銘板を次図の例により設置すること。(以下略)
遅延装置について
【新規追加】
遅延時間は退避時の歩行速度等、各部分の条件を考慮して十分な遅延時間を算出する。
閉止弁について
【新規追加】
閉止弁の設置が望ましいことと、閉止弁の基準、表示灯、警報音等について。
二酸化炭素消火設備の維持管理及び安全対策について
【新規追加】
4 閉止弁を設けた施設にあっては、次によること。(以下略)
7 避難訓練等で音響警報装置の警報音を聞く機会を設けること。
8 次に示す図書を備え付けること。(以下略)
旧ガイドライン「二酸化炭素消火設備の管理について」の2~5は新ガイドラインに盛り込まれている。
二酸化炭素消火設備が設置されている部分で工事等を行う場合の留意事項
【新規追加】
二酸化炭素消火設備が設けられている付近で、他の設備機器の設置工事、改修工事(特にはつり工事等)又はメンテナンスが行われる場合は、第14の規定及び抑制通知第3 5によること 旧ガイドライン「二酸化炭素消火設備の管理について」の1に文言追加と変更。

まとめ

今回は、新たに公示されたガイドラインについて解説しました。
法令改正に伴い、ガイドラインも安全管理について大幅に追加された項目が多かった印象です。
有事の際はもちろん問題なく作動することが求められますが、点検等の際は何かの拍子に誤作動を起こさないよう閉止弁は必ず閉めることを徹底しましょう。
もちろん、点検等が終了した後は、開放することを忘れないでくださいね。

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